ルーテル教会牧師の『イエスの涙』レヴュー

挙母ルーテル幼稚園チャプレン/挙母教会 鈴木 英夫牧師のレヴュー

三遠地区使信 No.585 話題の小説「イエスの涙」

豊田市立図書館は、私の癒しの場となっている。牧師館から徒歩5分の便利さ、館内の行き届いた空調と休息空間、最大15冊の貸し出しもありがたい。数種の新聞がまるまる一か月分閲覧できて、経済的である。

さて、先日話題の小説『イエスの涙』を呼んだ。面白いので借りて一気に読み終えた。小説なのでフィクションあり、娯楽ではあるが、キリスト教会の史実が巧みに織り交ぜられていて、不思議な興奮と誘惑がある。

プロローグに続き「キリスト教会の危機が迫っている」という刺激的な見出しで始まり、世界各地からバチカンに集められた超教派教職者200名による極秘 会議で幕を開ける。世界で発生している「十字架嫌悪シンドローム」について話し合うためである。ローマで留学を終えて帰国予定だった若き山本神父と、かつ て山本の恋人であり、やがてシスターとなった女性が、その事件の解決に深く関わることになってゆく。日本人が主人公であることも、日本人キリスト者として 不思議な親近感を覚えた。

小説の根本的問題提起は「イエス・キリストの心情」ということである。「本当に、イエス・キリストは喜んで十字架に付かれたのか?」という問いかけであり、現代の教会が掲げている神学・教理が、キリストの心情を確実に受け止めているだろうかとの、問いかけである。

昇天された主イエスが現実や夢に現れたり、祈りに支えられた奇跡も登場したりと、聖書の記述との類似性の中で、私たちに「信仰」について考えさせる。あくまでも小説でありフィクションであるが、小説「ダヴィンチコード」と共に、私には興味深い読み物のひとつとなった。

http://kamezo.cc/blog/entry/132977

Please publish modules in offcanvas position.